企業が新社会人に求める能力とは?
経済団体連合会(経団連)では、2001年から2019年まで、企業が大学生を採用するとき、重視する要素をアンケート調査しています。その結果を見ると、過去10年にわたり、1位「コミュニケーション能力」と2位「主体性」の2つが重視されてきていることがわかります。「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」は、ある程度は大切なのですが、ずっと横ばいです。
これは、変化の激しい時代には、企業は、周囲とコミュニケーションをとりながら、主体的に仕事を進めていく人材を求めていると理解できます。「コミュニケーション能力」というのは、自分の考えを一方的に話すというよりは、相手の意見をよく聴き、自分の意見もうまく伝えていく能力を指します。「主体性」というのは、自分で考え、自分の判断に基づいて行動できる能力です。
社会人基礎力の能力要素とは?
次に、2006年に経済産業省が発表した「社会人基礎力」について説明します。社会人基礎力とは、社会に出て行く若者が身につけておいてほしい「基礎的な能力」を整理したもので、3つの能力と12の能力要素で構成されています。
3つの能力は、「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」です。「前に踏み出す力」には「主体性、働きかけ力、実行力」の3つの能力要素が含まれます。「考え抜く力」には「課題発見力、計画力、創造力」の3つが含まれます。「チームで働く力」には「発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力」の6つが含まれます。この12の能力要素が、社会人になる準備として、身につけたい基礎力です。
この12の能力要素について、現在の30代以上は、実はあまり学校では習っていません。昔の学校教育は、暗記重視の詰め込み型で、「主体性」「働きかけ力」「課題発見力」「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「ストレスコントロール力」などは、学ぶ機会が多くなかったのです。
過去の詰め込み型教育が、人生100年のグローバル時代に合っていないということで、最近の学校カリキュラムは、大きく変わっています。小学校から大学まで、プレゼンテーション(働きかけ力や発信力などに対応)、会議での合意形成(発信力、傾聴力、柔軟性などに対応)、問題解決(課題発見力や傾聴力などに対応)、プログラミング(創造力や計画力などに対応)、といったプログラムが充実してきています。「アクティブラーニング」(主体的、対話的で深い学習)を取り入れる学校も増えています。
その成果で、最近の若者世代は、上司の世代より、人前でのプレゼンテーションや、会議を上手に進めることには慣れている人が多いです。新しいIT技術を使った動画作成や、SNSでの情報発信なども、明らかに上司世代より優れています。若者の皆さんは、時代が求める能力を身につけていると言えます。