これからのキャリア開発:自己効力感を高める

変化の激しい時代に対応するには、自己効力感(Self-efficacy)を高めることが必要です。自己効力感とは、「ある結果を達成するために必要な行動を、うまくできるように思えること」です。簡単にいうと、自分が「何かをやれそうな気持ち」のことです。カナダの心理学者アルバート・バンデューラが、1986年に提唱しました。

自己肯定感と似ていますが、自己肯定感が「自分を認める、自分に満足している」感情であるのに対し、自己効力感は「自分にはきっとできる、と考えられる」感情です。

この両方が大切ですが、人が行動をするときには、この自己効力感が、大きな影響力をもちます。例えば、仕事で難しい状況におかれたとき、自己効力感が高い人は、どうにか自分の力で乗り越えようと現実的な方法を考えて行動に移そうとします。一方、自己効力感が低い人は、不安や心配が心を支配して、自分には無理だ、やっても無駄だと決めつけてしまい、有効な行動が起こせなくなります。

自己効力感は、生まれつきもっている訳ではありません。後天的に鍛えることができます。自己効力感を生み出す基礎となるのは、次の4つです。

①成功体験:自分がこれまでに何かを達成・成功した経験は、最も強い影響力があります。勉強、部活、アルバイト、ボランティア活動などでほめられたり、上手くできたりしたことを思い出してみましょう。その成功体験は、「自分は、やってみれば何とかできる」という気持ちを高めることにつながります。

②代理学習:お手本になる人(ロールモデル)が何かを達成することを観察し、「自分でもやれそうだ」と思うことです。親、きょうだい、友人、同僚、身近な先輩などが上手く仕事をしていると、自分もできる気がします。本や雑誌に掲載された事例でも、映画やドラマの登場人物でも構いません。

③言語的説得:自分に能力があることを言語的に説明されることです。自分や他者からの説得や激励の言葉により、「自分ならやれそう」という感覚をもつことができます。誰かから「あなたなら大丈夫」と言ってもらえると効果的ですが、自分で「私ならできる」と言い聞かせることでも、プラスに働きます。逆に、「自分では無理だ」といった否定的な発言は、マイナスに作用します。

④生理的状態:身体的に健康で、精神的にリラックスした状態にすることで、楽観的で、前向きな気持ちが高まります。逆に不健康な状態だと、否定的な感情になり、何かができるという気持ちが低くなります。

就職して社会人になると、上手くいかないことがほとんどです。学生まではお金を払うお客様の立場ですが、社会人はお金をもらう立場になるので、学生の頃より何でも難しく感じるのは、自然なことです。したがって、「自分なら何とかできる」と考えられるように自己効力感を高めることはとても重要です。

ただし、自己効力感は、単に高ければ良いというものではありません。実際の能力と自己効力感が同じ程度であると、人は「自分に自信をもつ」状態になり、精神的に安定します。つまり「適度なレベルの自己効力感」を持つことが、キャリアを望ましい方向へ導くのです。

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