キャリアとは何か
そもそも「キャリア」とは何を意味する言葉かを確認しておきましょう。キャリアの語源は、古代ローマ時代のラテン語「carraria(車輪のついた乗り物)」と言われています。それが転じて、馬車などの車が通った跡(わだち)を、キャリアと呼ぶようになりました。つまり、「人が通った後に残るもの」がキャリアなのです。
現在では、キャリアとは狭い意味では、キャリアアップ、キャリアウーマンのように、「仕事、職業能力」を指します。広い意味では、キャリアプラン、キャリアデザインのように、「人が生涯に行う労働と余暇の全体」を指すようになりました。
人は自分の将来を展望するとき、「自分は何をして来たのか」「これまでの経験を活かして、何ができるのか」など自分が通ってきた道(わだち)を振り返ります。そして、立ち止まったところが現在であり、それが未来へと続いていきます。つまり、「キャリアを考える」とは、「どのような人生を送りたいか」を考えることなのです。
スーパーのライフキャリアレインボー
著名なキャリア理論家である米国のドナルド・E・スーパーは、ライフステージの概念を、成長期(0-15歳)、探索期(16-25歳)、確立期(26-45歳)、維持期(46-65歳)、衰退期(66歳~)の5段階に定義づけました。また、キャリアを「人生のある年齢や場面のさまざまな役割の組み合わせである」と定義し、この概念をレインボー(虹)にたとえて説明しています。
つまり、人生における役割は、ライフステージごとに変化するさまざまな場面、つまり家庭、学校、職場、地域社会などで演じられます。代表的な役割には、子供(息子・娘)、学生、余暇を楽しむ人、市民、労働者(職業人)、家庭人があり、それ以外にもさまざまな役割があり得るのです。
さまざまな役割は、重なり合ったり、相互に影響し合ったりします。ほとんどの人は、複数の役割を同時に行います。例えば、大学生は多くの場合、「学生、息子(または娘)、余暇を楽しむ人、職業人(アルバイト)」の4つの役割をもちます。成人の場合は、「職業人、息子(または娘)、市民、家庭人、余暇を楽しむ人」の役割をもつことが多いのです。
キャリアとは、「人生における複数の役割を、ライフステージに応じて組み合わせること」と考えることができます。人生の満足度を上げるには、この役割の組み合わせやバランス(力の入れ方)の最適化を、いつも考える必要があります。