前項では、ダイバーシティの進んだグローバル企業で働く楽しさを挙げてきました。本項では、苦労する点や必要な能力について説明します。
以前、グローバルに成功した人に共通する5つのスキル(好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、チャレンジ精神)を紹介しました。この5つに加え、多くの日本人の場合、「英語コミュニケーション力」と「異文化受容力」に苦労する人が多いので、この2つについてまとめていきます。
まず、英語コミュニケーション力についてです。私は大学生には、「英語ができて損をする仕事はない」といつも話しています。何か1つ資格の勉強をするなら、TOEICをお勧めします。
例えば、最近は、JRや私鉄の車掌さんも、英語でアナウンスができる人が増えています。これまでの車掌さん・駅員さんはあまり英語ができないので、インバウンドの観光客が増えた時代に対応するために、英語ができる若手は貴重な戦力です。採用面接でも、英語ができることはプラス点になるでしょう。同様に、これまではあまり英語ができる必要がなかったが、近年グローバル化が進んできた業界を志望する場合、英語ができる若者の採用ニーズは高いことが多いです。
英語力を客観的に示すには、社会に出るまでに、「TOEIC600点」(電子メールの読み書きができるレベル)を最低目標にするとよいでしょう。就職のエントリーシートでも、TOEICの点数を書く欄があります。今の時代は、英語を少しでも使う企業にエントリーする場合は、TOEICで600点をとれていないと、努力不足、能力不足と思われ、足切りされる企業が多いでしょう。
英語を仕事で使いたい場合には、TOEIC730点(電話会議に参加できるレベル)、できれば800点(電話会議で発言できるレベル)が必要です。例えば、社内公用語を英語にしている「楽天グループ」では、入社までにTOEIC800点取得が条件です。内定時に700点だとしても、入社時までに800点を取得するよう、通信教育の宿題をもらいます。その結果、全員が入社までに800点に到達するそうです。
大学生はあまり気づかないことですが、入社後の昇格の要件にもTOEICの点数を挙げている企業は多くあります。例えば、私が勤務していた三菱ケミカルでは、1998年時点で、課長職への昇格条件は、TOEIC730点でした。グローバルに展開している企業で、ある程度のポジションに昇進しようと考えると、TOEICは避けて通れないと思います。
実際に英語で仕事のコミュニケーションができるようになるには、リーディングとリスニングが主体のTOEICだけでは不十分です。自分が伝えたいことを論理的に整理し、それを英語で表現する(スピーキングやライティング)スキルも重要です。これは多くの日本人にとって、習得に時間がかかります。英会話教室に通ったり、海外語学留学に行ったりすることも有効でしょう。
私は英語の専門家ではないので、英語の勉強方法については、あまりアドバイスできません。自分に合った方法を模索してください。キャリア開発の視点では、英語を仕事で使えることで、キャリアの選択肢に幅ができることは確かです。