ダイバーシティ時代に必要な能力の2つめは、「異文化受容力」(自分とは異なる要素を受け入れる力)です。ダイバーシティの要素には、性別、年齢、人種、国籍、宗教、嗜好、価値観など、多様な視点があることは、すでに見てきた通りです。
仕事における異文化受容力とは、自分との違いを受け入れ、仕事をする上で問題がないようにお互いに配慮することです。私が経験した事例をご紹介します。
<宗教の違い>
・三菱ケミカルのインドネシア工場には、イスラム教徒の従業員が多くいます。彼らが仕事中にも、必要に応じてお祈りをできるように、工場敷地内に礼拝所があります。
・スイス系企業の事業部長だったとき、直属の上司は、インド人のヒンズー教徒の方でした。日本に来ると、牛、豚は食べない(宗教的に大事な日は、チキンや魚もNG)ので、レストラン探しに苦労しました。
<年齢の違い>
・外資系コンサル会社に転職して、プロジェクトリーダー(上司)が自分より年下の女性であることを経験しました。それまでの日本企業では、上司は年上の男性しかいなかったので、慣れるまで、少し違和感がありました。
・40代の前半は、外資系企業の事業部長として、年上の部下を大勢持ちました。自分が知らない業界で、その仕事を長く経験している年上の人たちに働いてもらうには、まず信頼関係を構築することの大切さを実感しました。
<国籍の違い>
・外資系企業では、いろいろな国籍の外国人の部下がいました。アメリカ、中国、ドイツ、タイなどの人たちです。外国人の場合、仕事の目的や内容に納得しないと動いてくれないので、論理的でていねいな説明が必要なことを学びました。
<LGBT>
・1999年、外資系コンサル会社で家族同伴のパーティーがあったとき、ある英国人男性が、男性のパートナーを連れてきました。私としては初めて、LGBTの方を身近に感じた経験でした。当時は英国では同性の結婚は認められていなかったため、その2人は米国に移住して結婚しました。
大学生が異文化受容力を高めるには、まず、多様な人と会話することです。同世代の友人だけではなく、アルバイト、インターンシップ、ボランティア活動などを通じて、年齢の違う人、外国人、障がいのある人などと話す機会をもちましょう。そこで、自分とは異なる立場、経験、価値観などを受け入れることに慣れていくとよいでしょう。
海外旅行や海外留学は、さまざまな価値観に触れる良い機会です。できれば一人で、日本人があまりいない場所に行かれると最高です。