大学を卒業してすぐ、または数年後に起業する人も増えています。大企業に勤めれば、定年まで安心という価値観が変化しているためでしょう。国や自治体も積極的な起業支援策を打ち出しており、起業に関する相談や、資金調達がしやすい環境が整ってきています。
起業するには、ビジネスのアイデアが必要です。そのためには、社会ニーズに目を向けるとヒントが得られます。社会ニーズには、「身近な困りごと」と「世の中の困りごと」があります。
「身近な困りごと」とは、自分や家族、友人が困っていることです。周囲をよく観察してみるとよいでしょう。自分自身のイライラや怒りの原因を考えるのも一つの方法です。イライラの後ろには、何かスムーズに事が進まない課題が隠れている可能性があります。
「世の中の困りごと」には、少子高齢化、労働生産性の低下、人手不足、環境汚染など、より大きな社会課題があります。新聞やビジネス雑誌は、社会課題の宝庫です。自分の働いている業界周辺の課題を考えると具体的に解決すべきテーマが見つけられるかもしれません。
経済産業省の外郭団体である中小企業基盤整備機構のホームページに掲載されている、学生が自分の経験を活かした起業事例を2つ紹介します。
まず、秋好陽介氏が2008年に設立したランサーズ株式会社は、2019年に東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場しています。秋好氏は、大学時代にウェブサイト製作、ウェブコンサルなどのネットビジネスで個人事業主を経験しました。その後、就職し、発注側の立場になり、仕事の受託者、発注者それぞれの立場を経験しました。発注者側となった会社では「スキルの高い個人に仕事を依頼したいが、社内の稟議がおりない」ことで苦労しました。そこで、受注したい個人と法人をサイト上でマッチングするクラウドソーシングサービスのビジネスモデルを思いつき、起業しました。
2つめは、仲暁子氏が2010年に設立したビジネスSNSのウォンテッドリー株式会社です。仲氏は大学時代に、仲間と起業しましたが事業は上手くいかず、外資系金融機関に就職しました。就職後、約2年で退職し、漫画家を目指しました。しかしプロデビューは叶わず、試行錯誤の末、日本の漫画を世界に発信するウェブサービスを作りました。漫画のウェブサービスをきっかけに、他のサービスをつくりはじめ、「こんなものがあれば役に立つのに!」という想いから、ビジネスSNSのウォンテッドリーが生まれ、2017年に東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場するまでになりました。
このように、若者が身近な社会課題を解決するために起業し、成功した事例は数多くあります。