新しい働き方(6)複業、週休3日制、ワーケーション

副業の進化系としては、いくつかの仕事をバランスよく兼ねる「兼業」や、複数の企業に勤めてどれが本業とはいえない「複業」という形態をとる人も増えています。

例えば、複業家のパイオニアとして著名な中村龍太氏は、IT企業のサイボウズ社(クラウドサービスの新規開拓)に勤務しながら、自分が設立したコラボワークス社でITの農業への応用(IoT農業)を行いつつ、自営農家も営んでいます。どれも本業で大切なものと考えるため、複業家と名乗っています。

『複業の教科書』という著書がある西村創一朗氏は、人材コンサルティング会社に勤務しながら、自分の会社を立ち上げ、仕事、子育て、社会活動などをバランスよく実践しました。現在は独立して、複業研究家、働き方改革の専門家として、コンサルティングを行っています。

複業は、個人事業主のフリーランスに近いですが、会社組織に一部所属している場合は、安定性はフリーランスより増すでしょう。インターネットが進化したおかげで、移動が減って仕事の効率が上がり、世界中で複業的な働き方をする人が増えています。新卒からは難しいですが、将来のキャリアの参考にしてください。

次に、「週休3日制」についてです。一般的には週休2日の企業が多い中で、週休3日制に移行する企業が増えてきました。ファーストリテイリング(ユニクロ)、日本マイクロソフト、佐川急便、Zホールディングス(旧ヤフー)、ファミリーマート、大和ハウス工業などがすでに一部の社員に導入しています。

日本政府の「経済財政運営と基本方針2021年」によると、働き方改革の一環として、週休3日制の促進を企業に促しています。まだ義務化する方針ではありませんが、少しずつ普及していくでしょう。目的としては、ワークライフバランスの向上、生産性の向上、従業員のモチベーションアップ、離職率の低下(採用競争力の向上)などが挙げられます。

週休3日になると、従業員としては、プライベートの時間が増える、副業・兼業がしやすい、資格取得などの勉強ができる、仕事のストレスが減る、といったメリットがあります。ただし、給与については、週休2日のレベルを維持される企業もありますが、少し減額になる企業もあります。

家族の介護や育児を、仕事と両立させたい人は、給与が減額しても週休3日にはメリットが大きいでしょう。人生の時期によって、多様な働き方が選択できる企業は、人材獲得の競争力が高まると言えます。

在宅勤務(リモートワーク)については、別項で述べているので、ここでは最後に「ワーケーション」について説明します。ワーケーション(Workcation)は、「ワーク(Work、労働)」と「バケーション(Vacation、休暇)」を組み合わせた造語です。観光地やリゾート地で、リモートワークを活用し、働きながら休暇をとる過ごし方です。

2019年に「ワーケーション自治体協議会」が設立され、その後のコロナ禍でリモートワークが普及したため、現在は24道県と183市町村が参加して、企業の集まりである経団連と共に、ルール作りなどの議論を進めています。実施形態は、企業により様々です。

私は外資系企業に長く勤務したので、海外でのマネジャー会議はリゾート地で行うことが多かったです。例えば、欧州での会議は、交通が便利なフランクフルトやロンドンではなく、デンマークのコペンハーゲン、フランスのリヨン、ギリシャのアテネ、ポルトガルのリスボンといった観光地としても楽しい街が選ばれていました。米国ではフロリダやハワイが人気です。会議の前後に休暇をとったり、そのままリモートワークで1週間滞在したりする人も多くいました。日本企業も、北海道や沖縄に出張したときは、その場で数日間、リモートワークできる仕組みになると良いですね。

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