東大理工系キャリア支援の契約満了:博士人材の育成は国家としての課題

本日で、東京大学理工連携キャリア支援室の仕事を終了しました。約2年、特任専門職員(キャリアアドバイザー)として延べ数百人の理系学部生・大学院生の就活支援をしました。一般的に、東大の理工系学生は就職に困らないと思われがちです。でも、実際には次のような悩みがあります。

  • 博士課程に進むかどうか(博士課程まで行くと、就職できないのではないか)。
  • 博士課程に進み、研究者・学者になりたいが、ポストを得られるか不安(ポスドクの数年間は有期雇用で不安定)。
  • 専門領域によっては修士でもあまり仕事がない(生物学、化学や地学の一部は民間企業には直結しない。例えば、昆虫・植物・魚・恐竜・地層・天文など)。
  • 指導教官が就職活動に良い顔をしない(特に大学院生は、研究を最優先にすべきという教授は多い)。
  • ベンチャー企業と大手企業のどちらに進むか(最近は、人工知能・ロボット・バイオのベンチャーも人気がある)。
  • コンサルティングに行きたいが、仕事がハードすぎて心配(マッキンゼーなどの外資系コンサルは大人気だが)。
  • 給料と自由度の高い外資系企業に行くか、日本企業に行くか(Google、Amazon、外資系金融などは魅力的だが将来は不安)。

特に、日本政府としては、理系の博士人材を増やすことは、技術面での国際競争力を維持するための重要課題です。先日のある調査では、自然科学分野で影響力の大きな上位論文数で、日本が世界12位まで落ちたとのショッキングな報道がありました。中国、アメリカ、ドイツ、イギリスなどはもちろん、韓国、スペインより下位になってしまったのです。

一方、大学生のキャリア意識が高まり、ベンチャー・コンサル・外資系といった選択肢が増えているので、学生も悩むところです。先生方も、優秀な学生には博士・ポスドクとしてアカデミアを目指してもらいたいので、たいへんです。

この2年に支援した学生たちが、納得したキャリアを送れることを願っています。

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