ベンチャー企業といっても、大学生の皆さんにはピンとこない人も多いと思いますので、事例を紹介していきます。
まず、世界的に有名なのは、グーグル(Google、企業名はアルファベット)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook、サービス名と企業名をMetaに変更)、アマゾンドットコム(Amazon.com)のIT企業4社です。頭文字をとってGAFAと呼ばれます。
この4社の株式時価総額は、最近ずっと世界トップ10の上位を占めています。株式時価総額は、企業価値を示す数字で、日本のすべての上場企業をはるかに上回っています。大学生でこの4社を知らない人は、おそらくいないでしょう。
この4社の創立は、アップル(1976年)以外は比較的新しく、アマゾンが1994年、グーグルが1998年、フェイスブックが2004年です。1990年代後半のインターネットとデジタル化の波に乗り、世界で急成長したのです。この4社は、20年ほど前までは、ベンチャー企業(あるいは元ベンチャー企業)と呼ばれていました。
日本にもベンチャー企業が数式市場に上場した成功事例は、たくさんあります(下表を参照)。
例えば、楽天グループは、売上2兆円近くの巨大企業ですが、設立は1997年です。兵庫県出身の三木谷浩二社長は、銀行に勤務していましたが、1995年の阪神・淡路大震災で親戚や友人を亡くし、「人生は有限だ。残された時間にやりたいことをやろう」と考え、起業したそうです。
サイバーエージェントは、インターネット広告専門の広告代理店として、従来のマスメディア(テレビ、新聞など)が中心のビジネスモデルを変革し、オンライン広告のトップ企業になりました。エムスリーは、製薬企業が医師向けにオンラインで情報を発信するプラットフォームで、「医療×IT」のトップ企業です。
最後のメルカリは、フリーマーケットのアプリで、使っている人も多いと思います。設立は2013年、そこからわずか5年で2018年に上場しました。創業社長の山田進太郎氏は、保有株式評価額が1000億円を超え、話題になりました。
このようなベンチャー企業に、10-15年前に入社した人は、とても楽しかったのではないかと想像します。会社が成長するダイナミズムに触れられ、それぞれの社員も成長でき、充実していたのではないでしょうか。
因みに私は、東京大学の理系学生の就職支援をしていましたが、最近の東大生のトップ層には、コンサルティング会社やベンチャー企業が人気です。東大の場合、先生や若手研究者が設立した大学発ベンチャーがたくさんあり、身近な先輩も多いこともあります。
経済産業省の「令和4(2022)年度大学発ベンチャー実態等調査」によると、2022年10月末時点で、大学発ベンチャー企業は3782社、そのうち東京大学が最多で371社(前年比42社増加)です。ペプチドリーム(ペプチドを応用した医薬品開発)、ミクシィ(SNS)、ユーグレナ(ミドリムシの活用)、PKSHA Technology(深層学習)、のように上場した企業も多くあります。
政府も大学も、新ビジネスの成功を後押ししています。もし成長軌道にのったベンチャー企業に出会うことができれば、安定性や給与面のリスクはよく考えた上で、新卒または数年後の転職先として、前向きに考えても良いと思います。