「ダイバーシティ(Diversity)」は、直訳すると「多様性」で、さまざまな属性の人が集まった状態を指します。属性には、年齢、性別、人種、宗教、障がいの有無など、多くの要素があります。
従来、日本企業におけるダイバーシティは、女性、外国人、障がいのある人などの雇用推進を説明するときに用いられてきました。それが現在では、多様な人材を登用し活用することで、組織の生産性や競争力を高める経営戦略として認知されてきました。
下記の写真を見てください。これは、私が、スイス系の医療機器企業に勤務していた2007年のマネジャー会議です。日本企業と何が違うか、考えてみてください。これはアジア太平洋地区なので、日本、中国、韓国、シンガポール、東南アジア、オーストラリア、インドなど、約25カ国の某事業部のマネジャーの集まりです。
日本企業との違いは、①いろいろな人種・国籍の人がいる ②女性が多い ③比較的若い、の3点です。
まず①の人種・国籍については、見るからに明らかです。アジア各国の人以外に、欧州や米国の人たちもアジアで働いていますので、国籍は、おそらく30カ国以上になります。実は日本人は、この中には、私ともう一人しかいません。
次に②の女性比率について。30%以上が女性マネジャーです。女性が活躍しやすいと言われる医療機器の仕事ということはありますが、これは15年以上前なので、今はもっと女性マネジャーが多いはずです。グローバル企業では、女性マネジャーが半数程度いるのが、当たり前になっています。
③の年齢層については、もし日本の伝統的な大企業で、マネジャー会議の写真を撮ったら、40代以上のオジサンばかりになります。グローバル企業では、年齢は関係ないので、実力がある人は、若くても責任ある仕事に就くことができます。
これからの日本社会は、少子高齢化で労働人口が減るので、女性はもちろん、シニア人材、外国人、障がいのある人などの活躍推進が、不可欠になっていきます。また、宗教、LGBTなども含む、異なる価値観を受け入れていくことも必要です。
多様な人材の活用については、欧米アジアのグローバル企業で、当然のように実行されていることが、日本企業では未だに遅れています。日本の男女平等(ジェンダーギャップ)の順位は、世界の中で、相対的に下がっています。「Global Gender Gap Report 2023」において日本は125位で、先進国中最低です。シンガポールや台湾はもちろん、中国や韓国より下回っているという状況なのです。
大学生の皆さんも、ダイバーシティ時代に合った価値観を育てていく必要があります。そのためには、学生時代から、学科やサークルの仲間だけではなく、多様な人と積極的に会話する機会を持つとよいでしょう。例えば、これまで話す機会のなかった学生、留学生、アルバイト先の人などと話してみることです。さらには、ボランティア活動、インターンシップ、海外旅行などで多くの人と交流できると自分自身の成長につながるでしょう。