企業の寿命は30年(1)変化の激しいVUCAの時代

人の寿命が100年になる一方で、技術や社会の変化は早く、企業・職業の寿命は短くなってきました。 

変化の激しいVUCAの時代 

VUCA(ブーカ)とは、1990年代後半に米国で軍事用語として使われ始め、2010年代になって、ビジネスでも使われるようになった言葉です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまい性)の頭文字をつなげたものです。

1990年以前の戦争は、国と国との戦いでした。両国の本部が作戦を立案し、現場の軍隊が作戦を実行するのが普通でした。ビジネスも同様に、経営陣が戦略立案し、現場が実行していました。軍隊もビジネスも、組織形態はピラミッド型で、指示命令系統は外部から見てもわかりやすいものでした。

一方、1990年代後半に台頭したアルカイダのテロ行為を、米国とアルカイダの戦争と見た場合、以前のような戦いとは根本的に異なる状況でした。アルカイダの組織は、誰がトップかよくわからず、作戦を本部が立て、現場が実行しているわけでもなさそうでした。アルカイダの思想に同調した人たちが、同時多発的にテロを実行していたのです。このような状況を示す概念として、VUCAという言葉が生まれました。

グローバル企業では、数年前から、激しい変化に対応するための企業のマネジメント会議などで、この用語を使い始めました。ビジネスでも、技術の進歩が急速で、グローバル化が進展し、将来予測が困難になったためです。世界の市場は、不確実性や不透明さを増しています。企業は、この不安定な状況でも、経営判断をして、事業を成長させていかなければなりません。そこで働く個人も、それに対応できる能力を身につけなければ、生き残れないというのです。

私の場合、2016年初頭に、当時勤務していたドイツ系企業のカナダで行われたグローバル会議で、この言葉に出会いました。そのとき、進行役が挙げていた近い将来の不確実性の要因としては、「英国のEU離脱」と「米国トランプ政権の誕生」がありました。ともに、世界各国から集まっていた参加者のほとんどにとって「まさか本当に起こるとは思わない(起こってほしくない、考えたくない)こと」でしたが、その数か月後に、両方とも現実の話になってしまいました。この2つの出来事は、その後の世界を混乱に陥れる要因となりました。さらに、その後に起こった、コロナ禍、そしてウクライナ危機も、多くの人にとって予測が困難であったという意味で、VUCAの時代を象徴する出来事でしょう。

では、個人はVUCAの時代に、どうしたらよいのでしょうか。不確実性、不安定性が高い時代に合わせて、不確実な事象に対応できなければなりません。従来通り、決められた職務を遂行できる能力、豊富なアイデアを出す能力などに加えて、想定外の事象に対し、臨機応変に動けることが大切になっています。また、個人のキャリアについても、時代の変化に対応して、柔軟に変化し続けることが重要になると考えられます。

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