人口ボーナス期と人口オーナス期
人口の変化を説明する「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」という概念があります。これは、米国ハーバード大学のデービッド・ブルーム教授が提唱したもので、人口変化が経済発展に与える影響をわかりやすく示しています。
まず、「人口ボーナス期」とは、ある国が「多産多死」から「少産少死」の社会に切り替わる際に、人口構成比の子どもが減り、生産年齢の人口が多くなった状態です。高齢者が少なく、労働力が豊富なため、経済発展しやすい時期です。現在の中国、韓国、シンガポール、タイなどが該当します。日本では1960年頃から始まり、1990年頃に終わりました。中国はまもなく終わり、インドは2040年まで続きます。
一度、人口ボーナス期が終わると、再び戻ることはありません。相対的に子どもが減り、高齢者が増えるためです。この時期を「人口オーナス期」と呼びます。オーナスとは「重荷、負担」の意味です。働く人よりも支えられる人が多くなる状況です。日本では、1990年頃から、少子高齢化が顕著になり、オーナス期に入りました。
時期による働き方の違い
人口ボーナス期には、男性中心に長時間働くことが、経済発展するために有利でした。製造業の比率が高く、力が強い人が、安く大量にモノを生産する仕事が多かったためです。
一方、人口オーナス期に経済発展しやすい働き方は、大きく異なります。
- なるべく男女ともに働く: 頭脳労働の比率が高く、労働力は足りないため、使える労働力はできるだけ活用する
- なるべく短時間で働く: 世界的なコスト競争において、短時間で成果を出さないと、先進国に勝ち目はない
- なるべく違う条件の人をそろえる: 製品サービスに新しい価値を提供し続ける必要がある。そのためには、異なる価値観の人が協力して働ける労働環境の整備が必要となる
日本は先進国の中で、人口オーナス期に適した働き方への転換が遅れていました。しかし最近では、政府や経済産業省が働き方改革を推進し、その成果も出てきました。
2018年のHR総研調査では、長時間労働の是正が進んだ企業が85%、業務の効率化が進んだ企業が77%、従業員の健康増進が48%、ダイバーシティ(女性活躍、育児・介護支援、高齢者雇用など)の推進が47%、従業員満足度の向上が46%といった成果が示されています。