ここではまず、女性が働き続けることで、一生の収入(生涯所得)にどのくらいの違いがあるかを見ておきましょう。
この図は、女性の収入を、働き方のケース別に生涯所得としてまとめたものです。Aは、正規雇用(正社員)として定年まで働き、出産などの休業がない場合で、生涯所得は2億5816万円になります。A-Aは、正社員で働き、育休を2回取得した場合で、2億3008万円です。同様に、A-T1とA-T2は、正社員で育休2回をとり、途中は時間短縮勤務(時短)の場合です。時短の期間によりますが、生涯所得は2億円を超えます。
一方、A-R-Pは、正社員として働いた後、出産退職し、その後はパート勤務にした場合です。この場合は、生涯所得が大きく減って、6147万円です。Bは、はじめから非正規雇用の場合で、出産などの休業がなくても、生涯所得は1億1567万円にしかなりません。(もちろん、業界や職種の違い、個人の能力差などにより、所得には大きな個人差があります。上記は全体の平均値です。)
このように、女性が経済的に豊かになるには、正社員として就職し、子どもが小さい時期は時短勤務でよいので、正社員で働き続けることが大切ということがわかります。言い換えると、夫も家事・育児に参加して、妻が働きやすい環境にできると、家庭の経済的ゆとりができるのです。
夫婦が2人で働き続けるメリットをまとめると、次の3点があります。
1つ目は、「経済面」です。ここまで見てきたように、夫婦で働くと、生涯世帯収入が大きく違います。男性の平均生涯所得は3億円弱です。これを男性一人で4億円にしようとすると、非常にたいへんです。しかし、夫婦でWLBを高め、家事や育児を協力し合い、男性が2億円、女性も2億円の収入を得られると、4億円になります。
2つ目は、「生きがい」です。100年生きる時代には、男女とも、キャリア(人生)を自立的に考えることが大切です。男性も女性も、働き続けることで、仕事にも仕事以外にも生きがいを感じられる場面が多くなるのではないでしょうか。
3つ目は、「楽しさ」です。2人で協力し合って、家事・育児を行うことで、共通の話題が多くなります。夫が家事に参加している家庭は、夫婦円満なことが多いと感じます。また、経済的なゆとりがあることで、子どもの教育、旅行、遊び、趣味などに選択肢の幅が広がるメリットもあるでしょう。