新しい働き方(4)社会起業、NPO設立

社会的課題を解決するには、株式会社として起業する「社会起業」と、非営利組織として「NPOを設立」するアプローチがあります。ここでは7つの事例を見ていきます。

①株式会社ボーダレス・ジャパンは、社会起業の代表例です。「ソーシャルビジネスで世界を変える」ことを目指し、社会起業家が集まるプラットフォーム会社として2007年に設立されました。現在、貧困、環境、教育などに関する問題を解決する47の事業を世界16カ国で展開中です。

②みんな電力株式会社は、電力自由化の流れにおいて、太陽光・風力・水力・バイオマスなどにより発電されている再生可能エネルギーの電力供給を行っています。自分の使いたい発電所を選ぶ仕組みもあり「顔の見える電力サービス」を展開しています。新エネルギーに関しては、他にも多くの企業が設立されています。

③株式会社ワークライフバランス(WLB)は、まだWLBという言葉が広く知られる前の2006年から、一貫して「働き方改革」を推進しています。31歳で起業した小室淑恵社長は、男女共同参画や長時間労働是正に関し、政府や国会に意見を求められる専門家として有名になっています。私もこの会社の認定コンサルタントとして、医療機関(病院)の働き方改革の支援をしています。

④NPO法人フローレンスは、病気や障がいのある子どもの保育サービスを展開しています。創設者の駒崎弘樹会長は、大学卒業直後の2004年、病児保育の社会課題を解決しようとこのNPOを立ち上げました。日本の社会起業の先駆者の一人です。

⑤NPO法人キッズドアは、日本の子どもの貧困問題に取り組むため、2007年に設立されました。家庭の経済的な理由で塾に通えない中学生、高校生の学習支援や居場所支援を行っています。創設者の渡辺由美子理事長は、内閣府や厚生労働省の有識者会議にも参画しています。

⑥NPO法人ファザーリングジャパンは、「笑っている父親を増やそう」を合言葉に、2006年に発足しました。男性の育児参加や、社会全体のワークライフバランス向上を目指し、イベントや啓蒙活動を実施しています。私もメンバーの一人として、若い世代が幸せに子育てをする支援をしています。

⑦NPO16歳の仕事塾は、高校生のためのキャリア授業を行うため、2009年に設立されました。社会人が仕事について説明する授業、社会人へのインタビューワークショップ、社会人基礎力ワークショップなど多くのプログラムがあります。私も社会人講師の一人として、年に数回、高校で授業をしています。また、本NPO創設者の堀部伸二理事長と共著で『16歳の仕事塾 高校生と親・先生のためのキャリアデザイン』(中央経済社、2022年)を出版しました。

このように、株式会社やNPO法人を設立し、社会や地域に貢献する組織は、数多くあります。大学生の皆さんも、社会起業に興味を持つ人も多いと思います。

最後に、株式会社とNPO法人の違いについて説明します。この2つの大きな違いは、「組織の目的」です。株式会社は、出資してくれた株主に対して「経済的利益(株価向上、配当金としての還元など)」を追求することが目的です。一方、NPO法人は、事業を通じての「社会的利益」の追求が目的です。

NPOもお金を稼いで利益を出すこと自体には問題はありません。ボランティア団体とは違い、事業を黒字化して経営を安定させること、働く人に適正な給料を払うことも大切です。しかし、NPOは「公益性」と「非営利性(利益を出資者などに分配しないこと)」が重視されます。主な収入源は、会費、寄附金、公的な助成金・補助金です。

したがってNPO職員の給与レベルは、株式会社と比べて低めのことが多いでしょう。フルタイム勤務でも平均年収は250万円程度を言われます。NPOで働くことのやりがいは大きいので、若い時期の社会勉強、社会人の副業、あるいはシニア世代の仕事としては、人生100年時代キャリアの選択肢の1つだと考えます。

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